11月例会報告
2018年 11月 14日
11月4日(日)13:00~16:00
参加者6名
第35回日本アドラー心理学会総会が地元石川で開催されたこともあり、3回ほど例会をお休みし、総会の準備などに取り組んでいました。なので、久々の例会らしい?例会です。参加者は、金沢の中心メンバー5人と、お隣の福井県から1名の計6名でした。
はじめに「前回学んだこと」を、お互いシェアし合いました。話題は全員総会に関する話でした。
私は、今回はホスト側だったので、何だか総会にグッと入り込めなかったというのが、率直な感想でした。とはいえ総会の運営上、重大な責任者だったわけでもなく…「金沢のメンバーは、とても輝いているのになあ。」なんて、思いながら総会中は過ごしていました。総会直後、メンバーと話をし、何となく自分に足りなかったものがみえてきました。それは、「タスクを引き受ける。」だと気づきました。タスクを引き受けるのが正直とても苦手なのです。日常生活だけでもいっぱいいっぱいと思いこんでいるせいで、タスクが入ってくると何だか辛いのです。でも、今回は、シンポジウムからはもちろん、メンバーとともに総会準備に取り組んできたおかげで、「これからは、タスクを引き受けていこう。」と、少し前向きに決心することができました。よって、ブログのアップを快く?引き受けることになりました。
今までは、例会の最初に「勇気づけの歌」を読んでいたのですが、今回からメンバーの提案により、「3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」(清野雅子 岡山恵美・著)を読むことになりました。
1ページづつ読み、質問や感想などがあれば発表し合うことにしました。私自身は、「はじめに」にあった「シンプルで楽しい『パセージ』」というところに、ひっかったという話をしました。アドラー心理学に出会った頃、パセージを受講して、子育てがより楽しくなってきた実感がありました。さらに実践して学び続けていきたい!と強く思えるほど確かにパセージは、楽しかったのです。6年以上経った現在はというと、自分が苦手とするところは、やっぱり今も苦手で、テキスト通りやろうとすると、かなり無理をしなければなかなか実践できない辛さを感じることがあります。痛気持ちいい辛さなのですが…。
その後、一人づつエピソードを聞き、話し合った結果、私の事例で事例検討を行うことになりました。
高校1年生Y君とのエピソードです。
模擬試験の朝、朝礼後のことです。模擬試験の日は、自分の机の中の物を全て廊下に出し、その後普段の自分の座席ではなく、出席番号順の座席に座らなければなりません。Y君の模擬試験時の座席には、H君ののファイルが入ったままになっていました。
Y君:「先生、今見たら、机の中に入ってたんですけど、どうしたらいいですか?」(-1)
私:「公欠(大会出場のため欠席)の子のかな?誰のかね?」と言ってファイルを見るとH君の名前が書いてあったので「H君のや。」
Y君:「どうしたらいいですか?」(-1.5)
私:「渡してくるわ。」と言ってH君に渡しにいった。
もう少し補足説明(言い訳)をさせて下さい。
この対応、間違っているということは充分承知しているんです。
①この後、定刻通りに模擬試験の問題を配布し、始めなければいけないという焦り。
②クラスの中では大人しいY君は、H君に声をかけて渡したくないんだろうな…
③H君のファイルって分かっているのに、いちいち聞きに来ないでよ…
など、いろいろ考えてしまって、とっさにこんな対応をしてしまったのです。
メンバーからの質問
Q.Y君はどんな感じの生徒ですか?
A.不都合なことがあると、すぐ頼ってくる。全員に配布したプリントが無かった時も数日経ってから「プリントなかったんですけど、どうしたらいいですか?」と聞いてきた。その時も「プリントが無いので下さい。」ってどうして言わないんだろうって裁いていました…
そこで、まずロールプレイをしてみました。
Y君役のメンバーからは、
・先生に言えば何とかしてくれると思った。
・自分がH君に渡して、ファイルの中を見たと思われたくないと思った。
などの意見が出ました。
子育ての心理面の目標を尋ねると、
・先生は、仲間だとは思ったけど、能力は全くないとは感じないがあるわけではない。
行動面の目標を尋ねると、
・全くダメではないが、自立しているとも思わないし、社会と調和していると思わない。
という意見が出ました。
そこで、Y君の良いところをみんなで出し合いました。
・ルールを守る。
・気づかないふりをしない。
・危機管理能力がある。(H君から勝手にファイルを見たと言われないように先生から渡してもらう。)
・要領がいい。
・先生のことを信頼している。
・ゆっくり学んでいる。(高校1年の男子にしては少し幼さがある、の良い側面)
など、たくさん見つかりました。
先生の良いところは
・Y君に怒っていない。
・冷静に行動している。
・親身になっている。
・声をかけやすい雰囲気がある。
・この対応はまずかったと気づいている。
・時間のないこのタイミングで「渡してくるわ。」が、この場面での最善の方法だと知っている。
ここでメンバーから質問がありました。
Q.この場面でY君に「H君に渡してきて」って言ったら、渡してくれそうですか?
A.「えっ?僕がですか?」と言ってすぐに行かない可能性が50%くらいある。
Y君に学んでほしいことは?
・自分で判断して行動する。
そのためにどんな工夫が出来そうですか?
・Y君に「どうしたらいいですか?」と聞かれたら、私も「どうしたらいいですか?」とY君に聞く。
スムーズにいきそうな気がしたのですが、あるメンバーから
「テキストに戻らないとね。」と言われ、パセージやパセージプラスのテキストから考えることになりました。
20-Lのお願い口調を使って頼むのはどうかという意見が出ました。
Y君に「どうしたらいいですか?」と聞かれたら、お願い口調で「自分で考えてもらっていいですか?」と言うのはどうかということになりました。
最初の段階で言うのと、私がファイルを受けと取ってH君のファイルと気づいた後に言うのとどちらがいいかについてもロールプレイをしてみました。
Y君になって考えてくれたメンバーから
・ファイルをいったん先生が受け取ると、先生が何とかしてくれるという気持ちになる。
・最初の段階で言うのがいい。「やさしくきっぱり」な感じがする。
・「やさしくきっぱり」言ってくれると一歩踏み出す勇気になる。
・Y君が大人しい性格だと考えると、自分からH君に渡したくないので、抵抗されるかもしれない。
など、沢山の意見が出ました。
そこで、再々度ロールプレイをしました。私は、前の教卓で仕事の手をいったん止めるが、ファイルは受け取らずに、最初にY君に「どうしたらいいですか?」と聞かれたら、Y君に「自分で考えてもらっていいですか?」と言うバージョンです。
今度こそ!と、思ったのですが、Y君になってくれたメンバーからは、
・何か冷たく感じる。その後Y君に「ファイルどうなった?」というフォローが必要な感じがする。と言う意見が出ました。
なかなかしっくりとした代替案が出ない中、再々再度、Y君にフォローを入れたバージョンでロールプレイをしてみました。
フォローされたY君は、それでも何かが違う様子でした。
その後フォローしたのにしっくりこない…
ようやく気づきました。私がY君を信頼し高校生扱いしていないということに‼
色々試しても、上手くいかなかったのは、Y君を信頼していない私の構えの問題だったのです‼
Y君は、大人しくて、人とコミュニケーションをとるのは苦手な生徒で、すぐに私に頼ってくる。と、私が思いこんでいる限り、Y君を勇気づけることはできません。
高校生なら、H君のファイルとすぐわかるんだから、「H君!ファイル机の中に残っとったぞ!」と言って直接H君に渡せばいいやろ…でも、Y君は難しいのかなあ。と見事に裁いていたのです。
最後のロールプレイをしました。
・私がY君には能力があると信じる。(今さらですが、Y君は学年でただ一人科学部に所属し、その関係で国が主催する大きなプロジェクトに継続的に取り組み、全国の高校生と関わったり、専門家の話をインタビューしたりしているのです。)
・仮定形のお願い口調にする。
と言う点に気を付けて行いました。
結果は…ようやくY君役になった人も、そして私も心理面の目標、行動面の目標のすべてに向かうことができ、ようやく両者がしっくりくることができました。
今回使ったテキストは、
パセージ
16L子どもの課題を共同の課題にするの3.引き受けることも断ることもできる
10Lふたたび勇気づけ
20L命令口調お願い口調
35L言ったことは実行する
4L子どもの不適切な行動にどう対処するかの2.不適切な行動に注目を与えないと3.適切な行動をしたとき、正の注目を与える
パセージプラス
7L所属と私的感覚の2.不適切な行動も所属を求めておこなわれる
などです。
最後に、「今日はどんなことを学ばれましたか?」で、終わりました。
・相手を信じるということがいかに大切か分かった。
・保育園などでは「やさしくきっぱり」が難しい時があるが、後にフォローを入れると随分変わるということが分かり、実践してみようと思った。
・学びの年数や、考え方の違うメンバーではあるが、お互い信頼して考えていくってすごいことだと思った。
などがありました。
最後に私が学んだこととして。
・何気なく話したエピソードで、その場の対応は悪かったけど、代替案もなんとなくわかるので、私のエピソードを是非扱ってほしいという思いはありませんでした。しかし、みんなで考えることによって、相手に能力があると信じて行動するのがどれだけ大切か身にしみて分かるという貴重な経験をすることが出来ました。メンバーと話し合うことで、初めて自分の枠を超えられる。このような場に来ないと自分の枠は決して超えられないということも体験することができました。
次回の例会もますます楽しみです。